2018年5月28日(月)大阪大学中之島センター 佐治敬三ホールにて『総務省IoTサービス創出支援事業・スマートキッズCity “YAOCCO” 成長への切れ目のない支援事業』の成果報告会が開催された。
今年4月に総務省で開催された全国の成果報告会での母子健康手帳データ化推進協議会の成果発表を報告し、今後の課題と可能性を共有するための貴重な時間となった。
最初に役員より挨拶・事業報告が行われた。
甲南女子大学教授の中村安秀先生からは、「母子健康手帳のデジタル化が担う役割は、医療者や大人だけのものではない『3つのファクター』があること」をご紹介いただいた。1つ目は『子どもが読むことを前提とした母子健康手帳』、2つ目は『少数派の子どもたちへのカスタマイズ可能な手帳』、そして3つ目は『パートナーも参加できる母子健康手帳』。デジタルの力を借りて、今よりもっとすみずみまで子どもたちをケアできるという母子健康手帳の重要性を確認した。
厚生労働省那覇検疫所所長の垣本副会長より、「予防接種の記録を『記憶ではなく記録を』」と、メッセージを紹介した。
また、本協議会が総務省へ提出した報告書の紹介として、『障がい・いじめの兆候の早期発見』『保育士の業務負担軽減』『信頼できる情報提供』の3つのリファレンスを掲げた。
続いて、実証実験や定期ミーティングの様子をスライドで紹介した。本年3月に放映された、NHK『ニュースほっと関西』では、東北大震災で母子手帳を失った親子が当事業の実証実験に関わったニュースが紹介された。母子健康手帳のデータ化に期待する親子の生の声と、今後必要となってくるIoTなど、来場者は真剣に耳を傾けていた。
報告では、実証フィールドの久宝まぶねこども園の五十嵐宏枝園長より、実際に動いてみないと見えてこなかった課題についてお話いただいた。アナログ作業が根強い保育園現場に対してIoTを取り入れることは、現時点では保育士の作業負担が増えることなど、現場からの貴重なご意見を伺うことができた。
また、子どものデータを収集するツールの一つとして、腕時計型のウエアラブルデバイスの紹介もあった。デバイスの開発に携わる企業は、収集したデータをDBへ簡単に、かつ恒久的なセキュリティがなされるシステムを構築することや、予防接種歴を病院が確実にチェックできること、ウエアラブルデバイスの防水性を高めることなど、今後の目標を挙げた。
この1年、当事業に関わっていただいた方々それぞれの大きなお力添えがあった上で、母子手帳の電子化は一歩前進した。
例えば母子健康手帳にバージョンを付けるなら、最初は『1.0』、そして母子健康手帳が災害に役に立つということが明確化した今が、『2.0』の時代、そして次の『3.0』は、まさしく私たちが行っているIoTが導入されること。それに伴い、これから考えていかないといけないことは、体制づくり。今の時代、行政だから大丈夫という時代ではない。子どもの記録データは誰のものか。それは保護者。行政と保護者と保育園と、情報を共有しながらどう体制づくりしてゆくのか。それが私たちの今後の課題である。
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